【ノベルニア】飯屋の女性の話

▷どんな台本?

 所用時間:5~10分くらい

 朗読です。


 どんなお話?

  →飯屋で女性から昔話をきいた。その内容が非現実的で、女性を守ろうとした男の子の慈愛が心にきゅんと来る(かも)


昼に飯屋に入ったときに、相席した女性から興味深い話を聞いたことがあった。

「私がまだ村にいた、うんと昔。とっても綺麗な花を村はずれの池の近くで生えていたのをおぼえています。私はその花が大好きになってしまって、なにせ同じ花を見たことがなかったものですから、枯れないように幼いながらに世話をしていたのです。池の水を両手で掬って水をやったりしたことがありました。そして、あまりにもその花が綺麗なので、そのときに友人だったニコという男の子にこの花を見せたことがありました。ニコは、花のよさなんてわからなかったようですが、この村には子供は私とニコしかいなかったもので、ニコにこの花のよさを伝えられただけで私は嬉しかったのです。

 ある日、その村に旅人が来ました。3名ほどでしたでしょうか。そのうちの一人が特別な花を求めて旅をして回っていると教えてくれました。私はすぐに、池の近くに生えたあの花だと気づきました。でも、この旅人には教えたくないとおもったのです。つまれてしまっては困るとおもって黙っていました。

 しかし次の日、私がいつものように池へいって花の世話をしていると、どうしてか旅人が現れたのです。花を見られたくないとおもって隠したのですが、すぐにバレてしまいました。

花を寄こすか寄こさないかといったことが起きます。いさかいは白熱して、旅人のうち一人が勢いのあまり私を殴りました。私はそのとき倒れてしまって、言葉もでなくなり、体も動かせなくなりました。旅人は焦ったふうになりましたが、そのうちの一人が急にこんなことをいうのです。

モンスターがやったことにして、いっそ殺してしまおうよ。

血の気がひいて、怖いことを怖いと思えないほど真っ白になってしまった感覚を覚えています。

それから私は気絶してしまったのでしょうか。夢の中で誰かの部屋に訪れました。そこにはローブを被り、白くて長い髪を垂らした同い年くらいの女の子がいたのです。

あら、起きたの。

彼女はそう声をかけてくれました。

すこし話をしていた気がするのですが、もう覚えていません。ただ、会話のあとに女の子が急にこういったのです。

あなた、あっちに待っている人がいるね

もう一度眠りなさい。あなたはそれを望まれている。

そこでニコの声が聞こえた気がしたのです。どこにも居なかったのに。

だんだん起きる感覚がして、私はその部屋にいられなくなりました。

気づけばあの村の池の近くで横たわっていました。

空はすっかり暗くなっていて、幼い私は親に怒られてしまうと気づいて急いで帰りました。

そこでようやく私はここ数日間行方不明になっていたこと、あの旅人はとっくに村から出て行ったこと、そしてニコがずっと見つからないことを知りました。

いまならわかります。きっと、あの池の近くに生えた花は生命の花だったのではないかと。旅人はその花をつんでしまったはずです。

あの日私は正しく死んでしまったのでしょう。ニコは死んでしまった私を見つけてくれたんじゃないかと思っています。そして、生きることを望んでくれた。生命の花は望んだ人のもとに現れると言われています。私は、生命の花が生えていた場所にもう一度生命の花が咲き、引き換えにニコはいなくなってしまったんじゃないかと考えているのです。

池の近くに生えていた綺麗な花は、あれから同じものを一度も見たことがありませんでした」

「その花はどういうふうに綺麗な花だったんですか?」

「覚えていないんです。だって、うんと昔だったんだもの」

そういって、皺まみれの手でスプーンをもち、おばあさんは暖かなスープを飲んだのだった。


※こちらは「ノベルニア」という世界観を元に作成した二次創作です※

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行雲流水

「こううんりゅうすい」 ありのまま私の思いついた作品を投稿したいという思いで名づけます。

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